社長と極上の生活
「……っなめ………ごめん…ね」
「へ?」
今、俺の名前を呼んだか?
それも『ごめんね』って……。
杏花の顔に近づいてみるが、起きる気配はなさそうだ。
って事は、やはり夢の中で俺の名を……。
彼女は一体、どんな夢を見てるんだ。
彼女に謝らせるほど、俺は何かしたのだろうか?
―――――夢の中の自分に嫉妬する。
例え、夢の中であっても彼女の傍に居れるなら……。
「………杏花」
愛しても愛し足りない。
触れていても触れ足りない。
彼女の身体も心も、俺で埋め尽くしたくて……。
「今から行って来るよ」
優しく語りかけ、彼女の髪にキスを落とす。
心はこの場から離れたくないと言っているが、
そろそろ仕事へ向かう時間だ。
今日も長い長い1日になりそうだ。
スッと立ち上がり、ジャケットのボタンを留め
名残惜しさをグッと噛みしめながら、俺は自宅を後にした。