社長と極上の生活
秘書課の確認業務を終えた沢田が珈琲を手にして、
「社長、………どうかされたのですか?」
「ん?………あ、いや、別に何でも無い」
「……そうですか?体調が優れないのなら、ご無理なさらず……」
「ん」
「………では、失礼致します」
机の上にスッと珈琲が置かれた。
相変わらず、沢田は鋭い。
俺の心境の変化も決して見逃さず、
公私共に信頼のおける唯一のパートナー。
柔らかい湯気と香ばしい香りに誘われ、
そっとカップに口を付け、
気持ちを切り替える為、暫し目を閉じた。
午前中は販売促進部の会議に出席し、
昼食は広告代理店との打ち合わせを兼ねた会食。
帰社したのが14時を少し回った頃。
自室に戻り、俺はすぐさまメールをチェックした。
そして、翌週に行われる選定会の書類に目を通し始めると
――――――――ガチャッ
「社長ッ!!」
「んっ、どうした?!ノックもせず、そんなに慌てて」
普段、クールな表情を決して崩さない沢田が
物凄く取り乱した状態で駆け込んで来た。