社長と極上の生活
「坊ちゃまには私が付いておりますのでご安心下さいませ。今は杏花様を……」
「あぁ」
柔和な表情で会釈されると、何だかむず痒い。
先程の俺らの情事が筒抜けかと思うと。
まぁ、仕方ないか。
「じゃあ、後は頼むな」
「はい」
斗賀の頭を軽く撫で、
俺は杏花が眠る上階の寝室へと急いだ。
1分1秒でも長く一緒に居たいから。
愛妻が眠るベッドへ潜り込むと、
「……要?」
「ん?」
杏花は寝ぼけているのか、俺の首筋に顔を擦りつけている。
久しぶりの彼女の行動。
俺の匂いが好きだと言った彼女は
眠る際はこうして擦りつけてたっけ。
たった数カ月しか経ってないのに懐かしさを感じた。
彼女が俺のぬくもりを求めるように
俺も彼女のぬくもりを感じて……
父親と母親になった今でも、
お互いに愛し合っているのだと改めて実感した。
杏花が流した涙の理由(わけ)は、
俺に『愛されたい』という杏花の愛の叫びだった。