社長と極上の生活
「いついかなる時も俯いてはダメです。常に大衆の視線を向けられていると思って下さい」
「ッ!?」
「けれど、その緊張はいい意味での緊張です。常に自分にほど良い緊張感を与えないと、人は身体から力が抜けてしまうので…」
「………はい」
「背筋を伸ばす事も、顔を上げる事も、人前で会釈する時もいい意味で緊張感が保たれていて当然です」
「……はい」
「歩く、話す、食べる等の一連の所作は慣れです。場数を踏まなけれなどうしても上手くいかない事も多いでしょう」
「はい」
「けれど、杏花さん」
「はい」
「これだけは覚えておいて下さいね?」
「はい」
「あなたの隣りには常にご主人やご家族、あなたを支えてくれている人が居るという事を」
「?………ッ!!………はい!」
先生はその後、私に解るように丁寧にご指導下さった。
決して、1人では無いという事を。
歩く時でさえ、常に誰かが周りにいる。
ファーストレディーでさえ、たった1人では歩かない。
だからこそ、躓いて転びそうになる事だってあって当然。
そんな時は、恥じらいながらも周りに助けを求めていいらしい。
けれど1番は、転ばないように歩く事なんだけど……。