社長と極上の生活
「フフッ、杏花さん?」
「あっ、はい」
「それはまだまだ可愛いモノですよ?」
「へ?」
先生は戸棚から1足取り出した。
「最終的にはこちらでエレガントに歩いて頂きますから」
「えっ………」
先生の手によって揺れる靴は、
ヒールが10㎝程の存在感のある靴。
「履き比べてみます?」
「い、いえ……」
世間ではハイヒールと呼ぶそれを手にして、
更に緊張が走った。
こんなにヒールの高い靴を履いて、
先生のようにエレガントに歩けるかしら?
5㎝のパンプスだってぎこちないのに。
ウォーキングは、テレビなどでモデルさんがするように
行ったり来たり何度も同じ線の上を歩く。
背筋を伸ばし、胸を張って、遠くを見つめ、
膝をピンと伸ばして、踵でしっかりと床を蹴る。
実際は蹴るとは違うんだけど、
蹴るように着地すると自然と重心が身体に乗る。
それを身体に叩き込むように何度も歩いた。