社長と極上の生活
鎖骨の少し下に唇を這わせ、かなり強めに吸いついた。
そんな俺の髪に指を這わせる杏花。
俺の意図する事が伝わったようだ。
セーターの襟元を元に戻して、彼女の腰を抱き寄せて。
もう片方の手で彼女の頬をそっと包む。
「これが消える前に帰って来るから」
「………うん」
「それまで、涙は………お預けな?」
「……んっ……」
今にも零れそうな涙を目尻に溜め、俺を見上げる杏花。
そんな彼女の涙を掬い絡め取るように唇を這わせた。
こんな風に求められたら、男冥利に尽きるってもんだよな。
ほんの少し安心したのか、笑みを零した。
すると、
「要ジュニアで我慢して待ってるね」
「え?」
「斗賀が林檎を見つめる瞳って、要にそっくりなの。それに笑う口元もよく似てる」
「ッ……!」
もしかして、斗賀の中に俺を重ねて見ていたという事か?
「たまにね、斗賀にじっと見つめられるとドキドキしちゃうの。ママ失格よね?」
自嘲気味に笑う杏花。
そんな風に我が子を見てるのは少し笑えるが、
それ以上に今は嬉しくて堪らない。
我が子を溺愛しながら、俺も溺愛されているのかもしれないな。