社長と極上の生活


「そんなにいい男か?」


「え?」


「フッ。穴は開かないが、事故りそうだぞ?」


「へ?!」


「フフッ、………冗談だ」


赤信号に捉まり、緩やかに停車すると


少し照れ臭そうに顔を傾け、視線が絡まった。


こんな風に触れられる距離にずっと居られる事が嬉しくて


ついつい我を忘れて見惚れてしまった。


だって、本当にいい男なんだもん。


出会って4年経つけど、未だにドキッとするし、


ますます男の魅力が増している気がする。


私は斗賀を産んで一気に老けてしまったけど、


男の30代は華だと言うし、


仕事の取引先で出会う女性達に


“いつか心を奪われるのでは?”と心の休まる時が無い。


それでも信じ続けたい。


………私だけを愛してくれているのだと。


優しく髪を撫でられ、心の燻りが静まってゆく。


「斗賀は寝てるか?」


「えぇ、ぐっすりとね」


まだ夜が明けたばかりの時間だから、愛息子は夢の中。


飛行機に乗る頃には起きてしまうかもね。


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