社長と極上の生活


30分ほどで空港に到着した私達は、


国内線ラウンジで軽めの朝食を摂ることに。


焼きたてのパンとオニオンスープを戴いて、


私は起きたばかりの斗賀に授乳する。


斗賀がまだ幼い為、旅行は移動時間の少ない国内にした。


それでも、初めての遠出だから心配は尽きない。


幼子を連れての旅行は負担が大きい。


荷物も多いし、周りにも気を遣わなくては……。


そうこうしているうちに搭乗時間になっていた。


「杏花、そろそろ時間だ。……行けるか?」


「うん、行けるわ」


要が斗賀を抱っこすると、斗賀は再びウトウト……。


お腹が満たされ、再び夢の中へと。


手荷物を持って立ち上がると、


「ん」


「………要」


さりげなく差し出された彼の左手。


そんな彼の些細な行動に躊躇していると、


彼は私の空いている右手をそっと掴んだ。


彼の大きな手から、“楽しい旅行にしような”と伝わってくる。


私は彼の気持ちに応えるようにギュッと握り返した。


< 274 / 337 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop