社長と極上の生活
30分ほどで空港に到着した私達は、
国内線ラウンジで軽めの朝食を摂ることに。
焼きたてのパンとオニオンスープを戴いて、
私は起きたばかりの斗賀に授乳する。
斗賀がまだ幼い為、旅行は移動時間の少ない国内にした。
それでも、初めての遠出だから心配は尽きない。
幼子を連れての旅行は負担が大きい。
荷物も多いし、周りにも気を遣わなくては……。
そうこうしているうちに搭乗時間になっていた。
「杏花、そろそろ時間だ。……行けるか?」
「うん、行けるわ」
要が斗賀を抱っこすると、斗賀は再びウトウト……。
お腹が満たされ、再び夢の中へと。
手荷物を持って立ち上がると、
「ん」
「………要」
さりげなく差し出された彼の左手。
そんな彼の些細な行動に躊躇していると、
彼は私の空いている右手をそっと掴んだ。
彼の大きな手から、“楽しい旅行にしような”と伝わってくる。
私は彼の気持ちに応えるようにギュッと握り返した。