社長と極上の生活


「杏花、大丈夫か?」


「……うっ……ん……」


ホテルで働いていた時に地震でリネン室に


半日以上閉じ込められていた事もあり、


不規則な揺れみたいなのが怖くて


それ以来、乱気流が怖くて飛行機が死ぬほど苦手。


結婚して、新婚旅行や仕事で何度か乗ったけど


本当に吐き気がするほど怖くて。


今回は国内旅行という事もあって


要がプライベートジェットを用意してくれたけど。


プライベートジェットでも、絶対揺れるはず。


飛行機に搭乗し、シートベルトをして


離陸するのを必死に堪えていた。


青ざめる私の手をぎゅっと握ってくれる要。


小型機にしてくれたお陰で、


手を伸ばせばすぐの距離に要がいる。


気休めだと思うけれど、


ヘッドフォンを手渡され、それをつけて。


好きな曲を聴きながら、


1分でも早く現地に着いて!と目をぎゅっと瞑った。





天候に恵まれたのか、殆ど揺れもなく


目的地の大分空港に到着したらしい。


膝の上でぎゅっと握る私の手を包み込むように


要の手が優しく重ねられた。


瞼を押し上げると、要が私の足元に跪いていた。

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