社長と極上の生活
要の視線の先は、ミス大分の女性が立っている。
ちょうど桜の満開時期ということもあって、
イベントなのだと思うけれど。
若くて綺麗でスタイルもよくて。
誰が見ても華があって……。
アラサーで出産も経験してる私にはない、初々しさも。
彼が私以外の女性に見惚れても仕方ない。
彼を永遠に惹きつけられるほど美人でもない。
スタイルだって、出産を機にだいぶ変化した。
若くて綺麗な子に目移りしても当たり前だけれど
やっぱり、分かっていても心は素直な反応を示す。
自然と目頭が熱くなって、
我慢しようとすればするほど、涙が溢れそうになる。
声を押し殺して、必死に耐えていた、その時。
「なぁ、杏花。……って、何で泣いてるっ?!どこか痛む所でもあるのか?」
要が振り返り、私の涙に気付いてしまった。
「……何でもないっ。ちょっと感極まって」
「え?………痛い所があるわけじゃないんだな?」
「うん」
必死に笑顔を見繕って誤魔化してみた。