社長と極上の生活
カチャッという音と共に、寝室のドアが開いた。
そして、背後から軽い衝撃を受ける。
「ッ?!……どうした?」
「斗賀、もう寝てたからっ」
ほんの少し息を切らしながら抱きつく杏花。
俺の元へ駆けて来てくれたようだ。
そんな彼女の想いに応えるように
くるりと体を反転させて、彼女を抱き締める。
最近、こんな風に杏花からアプローチして来るのは珍しくて
数十分前の出来事が脳裏を過った。
抱き締める腕をほんの少し解き、
俺の胸に顔を埋める彼女の顎を持ち上げる。
すると、数十分前の彼女よりも
もっと俺好みの表情を浮かべた彼女がそこにいた。
そんな顔を見たら、一瞬で理性なんて消え失せて
気付いた時には唇を重ね合わせ、
手加減なしで舌を絡め尽くしていた。
体を支える手に重みを感じて、漸く理性を取り戻す。
ふらつく杏花を抱き寄せ、心の底から満たされる。
出産を機に『夫』として受け入れられなくなる『妻』もいると
少し前にネットで見たから、
杏花がそうでない事を切に願っていただけに、
たった数分のキスでも、再確認出来たことに安堵して
ますます彼女に心を奪われる。