社長と極上の生活


カチャッという音と共に、寝室のドアが開いた。


そして、背後から軽い衝撃を受ける。


「ッ?!……どうした?」


「斗賀、もう寝てたからっ」


ほんの少し息を切らしながら抱きつく杏花。


俺の元へ駆けて来てくれたようだ。


そんな彼女の想いに応えるように


くるりと体を反転させて、彼女を抱き締める。


最近、こんな風に杏花からアプローチして来るのは珍しくて


数十分前の出来事が脳裏を過った。


抱き締める腕をほんの少し解き、


俺の胸に顔を埋める彼女の顎を持ち上げる。


すると、数十分前の彼女よりも


もっと俺好みの表情を浮かべた彼女がそこにいた。


そんな顔を見たら、一瞬で理性なんて消え失せて


気付いた時には唇を重ね合わせ、


手加減なしで舌を絡め尽くしていた。


体を支える手に重みを感じて、漸く理性を取り戻す。


ふらつく杏花を抱き寄せ、心の底から満たされる。


出産を機に『夫』として受け入れられなくなる『妻』もいると


少し前にネットで見たから、


杏花がそうでない事を切に願っていただけに、


たった数分のキスでも、再確認出来たことに安堵して


ますます彼女に心を奪われる。

< 301 / 337 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop