社長と極上の生活
午前中の外回りの仕事を終え、
杵友産業の祝賀会に出席するため、
11時30分過ぎに、着替える為に一旦帰宅する。
けれど、いるはずの愛妻の姿が無くて。
今日は店休日だからカフェにいるとも思えない。
村岡と買い物か?
自室がある上階へ向かい、手早く着替えを済ませて。
急ぎ足で職場に戻ろうとした、その時。
「ッ!?……要様」
玄関ドアから村岡が斗賀を抱っこして現れた。
「……杏花は?」
「……後から来ます」
「買い物?」
「……はい」
村岡の返答に間がある事が気になるが、
時間に追われている俺は仕方なくその場を後にした。
社屋へと降りるエレベーターの中で
先程の会話の違和感が何なのかを考えながら。
買い物に行ったのならば、
通常、荷物は村岡が持つはず。
杏花が斗賀を抱っこして帰宅するであろうに。
それに変な間も気になってしまう。
「社長、……社長?」
「あ、悪い」
エレベーターが止まり、
扉が開いているのに俺が降りて来ないものだから
沢田は気になったようだ。
「間に合うか?」
「ギリギリです」
「急ごう」
「はい」
祝賀会の挨拶を頼まれている俺は
沢田と共に社屋を後にした。