社長と極上の生活
「ちょっと早いけどね」
「……ん」
「卒乳しようと思って」
「卒乳?……授乳止めるってこと?」
「……うん」
「1歳までまだ2カ月あるけど、それでいいのか?」
「っ………、う、うん」
歯切れの悪い返答。
あんなにも育児に全力投球していた杏花なのに
こんなにもあっさりと前倒しして後悔しないのだろうか?
「後悔しないか?」
「後悔……すると思うけど、仕方ないというか……」
「仕方ない?………母乳が出なくなったとか?」
育児書に書いてあった。
ストレスや疲労で、母乳の出が悪くなると。
ここ最近仕事が忙しかったし、
それが原因で出なくなったのか?
「母乳は出てるんだけどね?」
「ん?……出てるのに、止めるってこと?」
「………うん」
「どういうこと?」
男の俺には授乳のことはよく分からない。
「離乳食に切り替えて、母乳が要らなくなったってこと?」
「いや、まだ少し足さないと足りないんだけど」
「じゃあ、何?」
全くもって理由が思いつかない俺は、
ネクタイの結び目を緩めた、次の瞬間。