社長と極上の生活
11 5回目の…
「要、忘れ物ない?」
「ん、だぶん大丈夫」
数年前から手掛けている大型プロジェクトが
いよいよ3日後に公開となる。
郊外の敷地を大量に買い上げて
数年前から少しずつ進めて来たこの企画は
一条のグループ全体の命運が懸かっていると言っても過言じゃないらしい。
だから、最近の要は見たことないほどに険しい表情で
食事をする時でさえ、スマホやタブレットを欠かさない。
それでも、私や斗賀への愛情は目減りすることなく
出先で買ったケーキやゼリーなど
お土産を買って来てくれるほど、家族への配慮は百点満点。
それでも、唯一、ダメだしするとしたら……。
昨夜、深夜に帰宅した要が着ていたスーツを手にして
そっと鼻を近づけると………香水の残り香が。
分かってる、十分理解してるつもりなんだけど。
それでもやっぱり、心は少し軋むのよね。
プロジェクトが大型複合施設だと言っていたから
その仕事に関する取引業者なのは想像が付くけど
香水の香りが移るほど密着しているという事が
妻心、女心に棘が刺さっているようで。