社長と極上の生活


「あっ…」


「ん?」


「今、お腹蹴った」


「フフッ、やっぱりヤキモチ妬きだな」


「フフフッ……そうみたいね?」


気まずい雰囲気は我が子に助けられ


杏花に愛らしい笑顔が戻った。


俺は杏花をゆっくり立たせながら、


「今日は早めに帰って来るから、散歩に行こう」


「うん」


すっかり母親らしい仕草を見せる杏花。


お腹に手を当て、愛おしそうに撫でながら


「今日はパパ、早く帰って来るって。良かったね~」


お腹の我が子に優しい声音で話し掛けて。


俺はそんな杏花のお腹にそっと耳を当てると


――――ポコッ


「んッ?!今、蹴ったな」


「うん、パパに合図したのかも」


「フフッ、こんな小さいうちから自己主張し過ぎだろ」


「きっと、俺様、あたし様になるんじゃない?」


「フッ、なら大変だな……杏花ママ?」


「ウフフッ……そうかもね?」


お腹を優しく撫でて、軽いキスを。


「じゃあ、いって来るな?」


「はい、いってらっしゃい」


俺はオフィスフロアへと自宅を後にした。

< 32 / 337 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop