社長と極上の生活
大型プロジェクトがいよいよ今日開幕する。
東京の郊外に設けられた大型複合施設は、
東京ドーム10個分の広さを誇り、
浦安市にある夢の国が東京ドーム11個分だから、
相当な面積だという事が窺える。
「杏花、何時頃に来る?」
「斗賀の離乳食が終わったら、出ようと思ってるけど」
「道も駐車場も混むと思うから、通行証を必ず車載しとけよ?」
「うん、分かってる」
特別扱いの通行証を手配してくれた旦那様。
まだ早朝5時だというのに、これから出勤するらしい。
私は昼前頃に合流するつもりだけど
要の仕事の邪魔は出来ないから、
斗賀を連れて、村岡さんとショッピングをするつもり。
「要、無理しないでね」
「着いたら連絡して」
ダークグレーの細身のスーツをビシッと着こなした旦那様は
パジャマにカーディガンを羽織っただけの私の体をぎゅっと抱き締めた。
真新しいスーツの匂いが心地いい。
最近嗅ぎ慣れたバニラのような甘い香りじゃないから。
「行って来ます」
チュッと出掛けの挨拶を落とした彼は、
優しい笑みを溢して、その場を後にした。