社長と極上の生活
「凄い人だかりっ……」
斗賀を連れ、モールに到着した私は言葉を失った。
主要駅との直通バスは勿論のこと、
タクシー乗り場の充実さを実感した上、
広大な敷地内をフリーパスで移動できるトゥクトゥクや
小型トラムが走っていて……。
既に乗り場は大渋滞の列を成している。
初日の今日は9時半オープンだったはずだから
たった2時間弱で既に待ち時間1時間ほど。
敷地内を周遊するファミリー向けの動物型バスや
レンタルサイクルのようなものまで乗り場は大混雑。
テーマパークや動物園のようなサービスが充実している。
大盛況なのは有難いが、トラブルが増えるんじゃないかと心配になる。
さっきから迷子の案内アナウンスが耳につき、
同じ子供を持つ母親として胸が痛い。
とりあえず、会長夫妻に連絡を入れてみよう。
忙しい要に連絡を入れた所で迷惑になるだけだから。
「もしもし?杏花です」
「着いたのかしら?」
「あ、はい。凄い人ですね」
「えぇ、本当に有難いことに沢山の方がお見えになって嬉しいわよね」