社長と極上の生活
入口に置いてあるフロアガイドを1枚取り、
敷地内の場所をざっと把握する。
1日では回り切らないかも……。
ベビーカーを押して、インフォメーション横へと向かう。
「早苗さんっ!」
会長夫妻の付き人をしている早苗さんを見つけ、
思わず声が弾んでしまう。
「おめでとうございます」
開店をお祝いする言葉を貰って、漸く実感した。
「広すぎて、歩き疲れてしまってね……」
「分かります、私もこれ見ただけでクラクラしそうですから」
手にしているフロアガイドをヒラヒラとさせると、
皆で目を合わせてプッと吹き出してしまった。
「杏花っ」
「ッ?!……要っ」
会長夫人が連絡したのか、要と沢田さんが姿を現した。
「車止めれたか?」
「たぶん、まだだと思う。村岡さんに任せて、途中から車を降りて歩いて来たの」
「言ってくれれば迎えに行かせたのに」
「大丈夫よ、忙しいでしょ?仕事に戻って……」
インフォメーションにいる受付のスタッフの視線が痛い。
3人いる女性全員が、要と沢田さんを見てる。
「昼食は『華禅』という和食処に席予約してあるから」
「ありがと」
「落ち着いたら、連絡する」
「無理しなくて大丈夫だからね」
「後はお願いします」
要は会長夫妻に一礼して、仕事へと戻って行った。
「さて、わしらは昼食にするか」