社長と極上の生活
長い髪を乾かそうとしている。
「俺がしてやるよ」
「えっ?」
俺の声で振り返る杏花。
そんな彼女の目の前にハーブティーを置いて。
「ありがとう」
「ん」
俺は彼女の手からドライヤーを受取り、
ドレッサーの鏡越しに笑顔を向け、
ふんわり柔らかい彼女の髪に
少しずつ温風をかけ始めた。
髪を乾かし終り、思わず笑みが零れる。
鏡に映る我が姫は、
気持ち良さそうに夢の世界へ。
俺はそっと、ゆっくり
杏花が起きないようにベッドへ運んで。
子を宿してから更に美しくなった杏花。
母親になろうと、慈愛に満ちている。
そんな彼女を見つめると
何故か、男心が切なく疼く。
この2人だけの時間は、
あと何日あるのだろうか?
子供が欲しくないワケじゃない。
結婚してもうじき3年目を迎える。
念願の我が子に
手放しで喜んでいるのは事実なのだから。