社長と極上の生活


午前10時を過ぎた頃、


村岡さんがハーブティーを淹れてくれた。


「杏花様、マッサージでも致しましょうか?」


「……ううん、今はいいです」


「左様にございますか?……何か、お悩み事でも?」


「えっ?」


「お顔の色が優れませんよ?」


―――――村岡さんは鋭い。


何でも完璧に熟す上、私の心中もお見通し。


私の相向いに座り、


心配そうに視線を向ける村岡さん。


………相談してみようかしら?


私は彼女の顔色を窺いながら、


「村岡さん」


「はい」


「あの、お散歩がしたいんですけど…」


「………そうですねぇ」


予想通り、表情を曇らせた村岡さん。


そりゃそうよね。


6月も下旬になれば、梅雨時期真っ只中だし


よりによって、今日は大雨。


とてもじゃないけど、妊婦が散歩出来る状態では無い。


我が儘を言って、村岡さんを困らせてしまったわ。


私は苦笑しながら……


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