社長と極上の生活


外は大雨だというのに、コートは要らないの?


私が不思議そうにしていると、


「では、参りましょう♪」


にこやかな表情で私の片手を取り、


背中にそっと手を添え、玄関へ促す。


もう、何が何だか分からないけど


この退屈な時間が楽しくなりそうだわ。


私は彼女に促されるまま、靴を履き


彼女と共に自宅を後にした。


いつもと変わらず、


専用エレベーターに乗り込むと、


………ん?


あれ……??


不思議に思う私を余所に


―――――――チーンッ


エレベーターはとある階で停止した。


「村岡さん?……ここ……」


「はい、一条コーポレーション社屋にございます」


ニコッと微笑む彼女と共に


要の職場、社長室があるフロアへ降り立った。


休日という事もあり、


シーンと静まり返るオフィス内。


独特の香りが漂って、何だか不思議な気分。


初めてじゃないのに、初めてのような……。


静寂な中、私たちの靴音だけが響いている。


すると、


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