社長と極上の生活
けれど、今ばかりは有難い。
「要、そこの袋、取って?」
「ん……これか?」
手渡された人参をチェックして
「うん、これで大丈夫。ありがとう」
「ん……で、次は何?」
「えーっと、次は玉葱」
カートを押す彼の後ろ姿を眺めながら
お腹を優しく撫で、ゆっくり歩く。
『パパは、本当にママに優しいんだよ』
お腹の赤ちゃんに心の中で語り掛ける。
お目当ての品物を全てカートに納め
ふと気が付いた事が1つ。
「要」
「ん?」
「要は何か、欲しいモノとか無いの?」
「んー……別に。欲しければいつでも買えるし」
「ホントに?」
「それより杏花、歩き過ぎだ。お腹は張ったりしてないか?」
「ん?……うん、今のところ大丈夫」
心配掛けないように笑顔を向けた。