社長と極上の生活


「杏花」


消え入りそうな要の声。


いつもなら安心出来る彼の声が今は凶器の様。


「出てって!!」


布団の中から声を荒げると、


「違うんだッ!!」


「………」


何が違うって言うの?


この目でハッキリ見たのよ?!


……言い訳?


それともアレは夢だって言うの?


そんな言葉を聞きたいんじゃない。


「ちゃんと説明するから」


「もういいって!!今は1人にして……」


「そうはいかない!!俺の話を聞けって!!」


「ヤダ!!」


「頼むから……」


肌掛布団の上から優しく身体を撫で、


切なそうな声音で語り掛けて来る。


浮気の言い訳なんて聞きたくない。


私なんか比べものにならないくらいの美人だった。


しかも、私は身重の身体。


要の欲求を満足させられない事くらい


私が1番……分かってる。


だからって―――――………。


< 62 / 337 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop