社長と極上の生活


「あの人に触れた手で触らないで!!」


私は初めて彼を拒絶した。


だってそれ以外、


今の私に抵抗する術が無い。


「杏花」


要の優しい声音に自然と涙が溢れ出し、


胸の奥から悔しさが込み上げて来る。


下唇を噛み、声を押し殺して涙すると、


「分かった。そのままでいいから聞いてくれ」


要は囁くように語りかけ、話し始めた。


「杏花、ソフロロジー式分娩って知ってるか?」


……ソフロロジー式分娩?


確か、前に出産の本に載ってたような。


「赤ちゃんを第一に考え、リラックスしながら自然なペースで分娩出来る方法だ」


は? 要は何を言ってるの?


浮気の話はどこに行ったのよ?!


もしかして、違う話題にすり替えるつもり?


浮気とその分娩方法に何の関係が?


私は布団の中で眉間にシワを寄せ、


要の言葉に耳を傾けていた。


すると、ゆっくりとした口調で…


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