社長と極上の生活
「杏花?」
「………」
フッ、可愛い顔して、今日も杏花はコクコクと
スツールに腰掛けたまま眠り姫のように。
美しい寝顔を覗かせている。
俺はそんな彼女を抱え、ベッドへ。
さすがに身重な杏花を楽々と抱えるのは至難。
けれど、落とすワケにもいかず
それはそれは大事に抱えて……。
ベッドへ寝かせると、毎度の事
無意識で俺を探し求めている。
シーツの上を彷徨う彼女の指先に
自ら身体を差し出す形で
俺は彼女の腕の中へと吸い込まれる。
杏花が俺を求めているのではなく、
俺が杏花を求めるように。
愛らしくも美しい我が妻は、
余程心地良い夢を見ているのだろう。
俺の胸に寄り添う彼女は
ビーナスのようなマドンナのような
例えようの無い、美しさと慈愛に満ちた表情をしている。
そんな彼女を独り占め出来る夜は
一体、あとどれくらいあるだろうか。
俺は彼女を腕に閉じ込め、
静寂な夜に呑まれて行った。