社長と極上の生活
心地良い静寂の中、
温かみのある木の香りが漂う『茶室』
敷居の高い茶室ならではの空気を纏い、
心の底から汚れを浄化するかのように。
先日、祖母に教わったこの茶室。
ちょうど、お盆までの期間限定で
茶道・香心流の人々がお茶を点ててくれると言う。
毎日仕事が忙しく、こんな風に
ゆっくりとお茶を戴く事は何年ぶりだろうか。
「わぁ~要、もしかして、お抹茶を戴けるの?」
「あぁ」
「えっ、ホント?」
杏花は俺の手を握り返し、瞳を輝かせ始めた。
お弟子さんと思われる人に2人分を支払い、
俺らは立礼席へと案内された。
誰でも気軽に立ち寄れるように
立礼席で点出しの呈茶が戴ける。
杏花と並んで腰掛けると、
「あの……」
「?……はい」
突然、和服姿の若い女性が声を掛けて来た。