社長と極上の生活
一瞬にして杏花の顔が強張り、
無意識にため息を吐いている。
フッ、どうせ
『身重の女は敵じゃない』等と
勝手に妄想を膨らませ、
可愛い事にヤキモチを妬いてるんだろうよ。
そんな杏花が堪らなく愛おしくて、
俺は声を掛けて来た女性に冷視線を浴びせる。
すると、
「失礼ですが、一条様では無いでしょうか?」
「…………そうですが」
俺らが『一条』だと知っていて声を掛けて来た。
杏花は公の場に殆ど姿を見せてないが、
俺は幼い頃から会長夫妻と共に
公の場に出る事も多く、
それなりに顔は知られているハズ。
一条と知って、声を掛けたという事は
ミーハーか?
ますます嫌悪感を露わにする杏花。
臨月の杏花にとって、
精神的な苦痛も避けて通りたい所。
俺はそんな彼女の手を握り、
安心させるように笑顔を向けると。