社長と極上の生活


臨月の杏花にとって、


畳の上に正座する事は困難である。


ワンピース姿の杏花が


まさか、茶室で胡坐を掻くワケにもいかず、


部屋へと促された時は、正直不安が過ったが、


和座椅子が用意されている事に心から安堵した。


俺らが腰掛け、一息つくと


「突然、お呼び立て致しまして申し訳ありません」


炉の前に正座している家元が口を開いた。


俺と杏花が苦笑を浮かべると、


家元と夫人は息ピッタリに


俺らへ丁寧にお辞儀をした。


「以前、何かの祝賀会でご一緒した事があるのですが」


「えっ?」


「まぁ、広い会場でご一緒したという程度の事です」


「……そうなんですか?」


「えぇ」


黒髪が和服に良く合う彼は、柔和な表情で。


「うちの家内が奥様の事をリスペクトしておりまして…」


「家元ッ!!////」


心中を暴露された夫人は頬を赤らめ恥ずかしそうに。


フッ、奥さんにメロメロな所は、俺と似てるな。


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