社長と極上の生活


「ここでこうして、お会い出来たのも何かの縁」


「そうですね」


ふと、表情を緩めると


「お抹茶には赤ちゃんの発育を助ける亜鉛が多く、またビタミンも豊富に含まれています。カフェインを気になさる方もいますが、1日2~3杯の薄茶なら問題ありません。むしろ、妊婦さんに多い、便秘を改善してくますよ」


「そうなんですか?!」


「はい」


夫人の言葉に、借りて来た猫状態だった杏花が


瞳を輝かせ、身を乗り出し始めた。


「それに私どもの抹茶は、妊婦の方にもご安心してお召し上がり戴ける無添加のモノを使用しておりますので…」


「良かったな、杏花」


「うん!!」


強張っていた表情はどこへやら。


杏花は完全に茶室マジックにかかったらしい。


鼻唄でも出て来るんじゃないかと思うくらい上機嫌。


そんな俺ら2人を見据えていた家元は


着崩れを直し、深呼吸して、座り直した。


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