【超短編】湖
湖の中は、何処までも透き通っていた。
底の方には魚が、正確には魚のような何かが優雅に泳いでいた。
‐綺麗だろう?
「ああ、とても綺麗だ。」
しばらく、時間を忘れて見惚れていた。
が。
「わりぃ。この後、用事があんだ。」
今日は高校に行かなくてはいけない、平日だ。
‐そうか、残念だ。
ならばこれを持って行け。
そう言って、自分の羽に触れた。
すると、真っ赤な羽が一枚、抜けた。
「軽いな。これ。」
‐空を飛ぶための物なんだ、軽いのは当たり前だろう。
「そうか。」
‐此処に来た事を、覚えておけ。
我の名は、朱華。赤い花と書いて朱華だ。
「朱華、いい名だな。」
‐若者よ、お前の名はなんだ。
「湊だ。覚えとけよ?」
‐ああ、覚えておこう。湊。