【超短編】湖





‐それでは、そこに飛び込め。


「…正気か?」

まだ、2月。水は冷たかった。
そこに飛び込めというのだ、この鳥、否、朱華は。


‐冷たいが、服は濡れない。さあ、用事とやらに間に合わないぞ?


明らかに面白がっている朱華に、おい、とツッコミを入れつつ、
湖の淵に立った。


「じゃあな、朱華。」


‐ああ、湊。



それを合図に、背から湖に倒れていった。

もうすぐ水面につく、というところで朱華と目が合った。
少し、微笑んだような気がした。


だから、自分も笑いかけた。








< 5 / 6 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop