【超短編】湖
‐それでは、そこに飛び込め。
「…正気か?」
まだ、2月。水は冷たかった。
そこに飛び込めというのだ、この鳥、否、朱華は。
‐冷たいが、服は濡れない。さあ、用事とやらに間に合わないぞ?
明らかに面白がっている朱華に、おい、とツッコミを入れつつ、
湖の淵に立った。
「じゃあな、朱華。」
‐ああ、湊。
それを合図に、背から湖に倒れていった。
もうすぐ水面につく、というところで朱華と目が合った。
少し、微笑んだような気がした。
だから、自分も笑いかけた。