青龍と桜
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プロローグ
今日も空では月が美しく輝き、地上では一人の女が美しく舞う。
彼女の通り名は、夜桜。
誰がいい始めたのかわからない、名。
月夜の輝く晩にだけ現れて
ケンカとは言い難い、まるで美しい舞と言った方がしっくりくる、ソレを披露する。
彼女が去った後には、散った桜の花びらのように倒れる人しかいない。
彼女が相手にするのは、悪名を流す不良や族がほとんどで、たまに人助けもしているとか。
彼女自身、どこかの族に入っているとも聞かない。
また、彼女の素性を知る者もいない。
ただ、月夜に誘われては、美しい舞を披露し、桜が散るようにひらりと消える。
彼女の噂は、謎多きままに広がっていった。
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