青龍と桜

「そこを夜桜さんが助けてくれたんだ!」
目をキラキラさせて、田中くんが熱く語る。

「よかったね」

私が笑顔で言うと、田中くんは途端に再びしゅんと肩を落とす。

「でも、俺ら実際に夜桜さんを見た訳ではないんだよ…。姫の話を聞いた総長が、夜桜さんだろうって。姫もお礼がしたいというので、俺ら下っ端に夜桜さんを探せって指示がでたんだよ」
「そっか」
「そう。だから桜色の瞳ってこと以外、手掛かりゼロってわけ」
「それは、大変だね…」


私は田中くんと分かれ、教室で騒いでいるクラスメートたちを見た。
先程の田中くんとの会話で、朝から"夜桜さん"の話題で持ち切りだった訳がわかった。
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