青龍と桜

3



「夜桜さんの手掛かり、見つけたんだって?」

放課後、ほとんど人がいなくなった教室で、私は帰る準備をしていた田中くんに話しかけた。

「東絛さんも知ったんだ。早いね」

田中くんはちょっと恥ずかしそうに、でもどこか誇らしげな表情をしていた。

「うん。今日、美花に何度も聞かされたし、どこ行っても朝からその話題で持ちきりだったし。田中くんもすごい大変そうだったからね」

普段の私なら、族絡みの話題はほとんど記憶に残らない。
記憶に残るようになったとしても、それはすでに数日たった後だったりと周りと時差ができていた。

それをクラスメイトとして、そこそこ会話をする田中くんは知っており、だから当日中に記憶に残った今回は早いと言ってきた。


確かに今回、当日中に私の記憶に残るくらい、至るところで話されていた。
それに今回のことは私の身近にいた、美花に寄る処も大きい。

学校につくなり、 コートを脱ぐ間もなく、私たち3人は美花にほぼ拉致られる形で、屋上につれて行かれた。
そして、夜桜さんの手掛かりが掴めたことを興奮しながら教えてくれたのだった。

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