青龍と桜
第一学区の夜
その日の夜は、一際月明かりが輝いていた。
第一学区では、夕刻より、青龍と白亜の抗争が続いていた。
「くそっ、姫を返せっ!」
「誰がやすやすと返すかっ!」
「お前ら、潰してやる!」
「お前らこそ、潰してくれる!」
男たちが殴りあう、その光景を影から一人見つめる女がいた。
月明かりに映える、淡い桜色のパーカー。
フードを被ってもおさまりらきらない、胸に垂れる黒髪。
その奥に輝く、淡い桜色の瞳。
彼女は夜空に神々しく輝く、月を見上げた。
その瞳の色が、次第に濃さを増していく。
彼女は完全に濃い桜色になった瞳を、地上に戻す。
その瞬間、ブワッと強い風が吹き、男たちの手が一瞬止まる。
彼女はその瞬間を見逃さず、男たちの間に滑りこみ、華麗に舞始めた。