朝だけの秘め事
幼かった自分には言えなかった大好きだった思い。
全く変わって無い姿に心が揺れない訳が無い。
あの頃にこの想いを知っていたなら……けれど今は互いに大切なパートナーがいて。
それは分かっているのに、あの頃の想いが盛り上がり、どうしようもなく止められなくなって……彼の汗と熱を帯びた吐息の中で、がっしりとした腕の中で、体も心ももがく。
触れ合う唇が、言葉にならない言葉を紡ぐ。
「いつかフルマラソンしてみたいな」
それが一日中のデートを指してること私にも分かってる。
叶わない願い。
あっという間に過ぎていく5キロ分のマラソンタイム。
焦がれ続けていた誰よりも私を狂わせる唇、指、体。
それをリアルに知ってしまったから、私はまだまだ走り続けるしかない。
【END】