赤い月 終
昔話でもしようか

有明月(アリアケヅキ)


『ジジィに用がある』
なんて嘘をついて、景時は一人部屋を出た。

いつものように見送ってくれたうさぎの微笑みを思い出すと、チクリと胸が痛む。



ハイ、それも嘘。

ほんとは、ズッキンズッキン痛んでマス。

ごめんね、うさぎ。

でも、知らなくちゃ。
本当のコトを知らなくちゃ。

景時はヘルメットを脱ぎ、夜空にそびえる高層マンションを見上げた。

オートロックを解除してもらい、エレベーターに乗り込む。

遅い時間だ。
最上階まで、ノンストップ。

景時が連絡した相手…

黒曜は、玄関扉を開けて待っていてくれた。

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