赤い月 終

「…よう。」


「…コンバンワ。」


軽く挨拶だけ交わすと、後は無言でリビングに通される。

そう言えば、ここまで足を踏み入れるのは初めてだ。

うさぎを迎えに来ていた時は、玄関先までしか入らなかったし。

卓球台を並べたくなるような広さ。

大理石の床。

間接照明に照らされた、幾何学模様のモダンアート。

だがソレよりナニより圧巻なのは、壁一面の大きな窓からの景色。


(ココなら、月見し放題じゃん…)


窓際に佇むうさぎが脳裏を過り、景時は唇を噛んで目を逸らした。


「アイスコーヒーでイイだろ?」


生活感が全くないキッチンから、Tシャツとスウェットパンツという、いつもよりラフな格好の黒曜が出てくる。

景時はコクリと頷き、勧められた黒い革張りのソファーに腰を下ろした。

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