赤い月 終
鬼と月のお伽噺
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昔々ある山に、いつの頃からか一匹の鬼が住んでいました。
銀の髪。
赤い瞳。
誇らしく天を指す二本の角。
見目麗しく心優しい、人に恩恵を与える少女の姿をした鬼。
山の麓にある里の者は皆、彼女を『鬼姫様』と呼んで慕い、敬い、共に仲良く暮らしていました。
ある月の美しい晩のこと。
鬼は峠の祠で、赤子を見つけました。
人気のない場所に、薄い布を巻かれただけで置き去りにされた赤子…
乳を求めてふにゃふにゃと泣く赤子を不憫に思った鬼は、その子を里に連れ帰りました。
だけど、決して豊かではない里のこと。
他人の赤子まで育てる余裕のある家はありませんでした。
鬼は困り果てました。
─人ではない自分が、人の子を
育てても良いのだろうか。
鬼に育てられた子が、人とし
て生きてゆけるのだろうか。
だが確かに此処に在る命を、
なかった事にはできない…
散々悩みはしましたが、鬼は赤子を育てることにしました。
色白で目がパッチリとした、女の赤子。
鬼は、その子と出逢った美しい夜にちなみ、『月夜』という名を与えました。