赤い月 終
時の流れは早いもの。
幼子は少女になりました。
野の花を愛し、思い遣りに溢れた月夜。
だけど狭い里では噂が流れるのも早く、月夜が赤光であることは、周知の事実になっていました。
人だけでなく、鬼すら喰らう忌まわしき化け物。
世を地獄に変える、凶暴な化け物。
早々に始末すべきでは?
鬼姫様がついておられるのなら、大丈夫なのでは?
疑念、恐怖、不安…
里には不穏な空気が漂っていました。
そんな中、里の童が月夜を苛めていることを、鬼は知りました。
鬼の子、鬼の子、と囃し立てられ、石を投げられ…
鬼は怒りました。
─おのれ、餓鬼共。
妾が懲らしめてくれよう。
だけど月夜は、困ったように微笑みました。
─良いのです、優しい母様。
どうかお怒りにならないで。
月夜が鬼の子なのは、本当の
事。
恐れられ、嫌われても、仕方
のないこと。
母様に拾われ、愛されている
だけで、月夜は誰よりも幸せ
者です。
かくも清らかなその心。
かくも麗しきその心。
鬼は益々月夜を慈しみ、持てる愛情の全てを注いで彼女を育みました。