赤い月 終
ム リ デ ス ヨ

初めて出逢った場所。
激しい恋に落ちた場所。

あの廃ビルの周りには、足場が組まれていた。

取り壊しになるのだろう。

ナニカがなくなって。
またナニカが出来て。

街は変わる。
世界は変わる。

たぶん、人も。


「お待たせー。」


月を見るうさぎがいた窓辺に佇む、うさぎじゃない人影。

黒いシャツを羽織った広い背中に、景時は声を掛けた。

振り返ったのは、黒曜。

今夜は鬼だ。
束ねた銀の髪を夜風に靡かせた、雄々しく精悍な鬼。

だがその面には、悲痛な色を漂わせている。

似合わねェよ?
そんな顔。

いつももっと、ふてぶてしいじゃん。

やンなっちゃうなぁ…

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