赤い月 終
「やるべきことは、全て終わったのか?」
視線は刺すように鋭いのに、聞き取りにくいほど低い黒曜の声。
大丈夫。
見られたくないモノは全部処分した。
部屋の片付けも万全。
ジジィと薫には、手紙を書いてサイドボードの上に置いてきた。
うさぎには‥‥‥‥‥
「バッチリ。」
後ろめたい気持ちを振り払うように赤い髪を掻き上げ、景時はヘラっと笑った。
「‥‥‥‥‥いいンだな?」
沈黙の後の、短い問いかけ。
きっと、最後通告だろう。
イイよ。
鏡の中で、一度は覚悟したンだ。
「うん。」
微笑みながら頷くと、黒曜が殺気を放つ。
爪がギラリと輝き、長い指に力がこもる。
景時は穏やかな気持ちで、牙を剥いた鬼を見つめていた。