赤い月 終

うさぎ。

俺はもう君には会えないケド。
これでいい。

君を失うくらいなら。
これでいい。

きっと君は、俺を思い出してくれるだろう?

今なら、そう信じられる。

君にとっては一夜の戯れだったかも知れないけれど、確かに俺は、君に愛を刻みつけた。

そっと睫毛を伏せる。

瞼の裏に浮かぶのは、あの夜のうさぎ。

君が、好きだ。

本当に、大好きだ…

目を閉じていた景時は見なかった。

今にも景時の心臓に届かんとしていた鋭い爪がピタリと止まり、黒曜が険しく眉を顰めたのを。


「…気配を消すのが上手くなったな。」




ハイ?

まだ消えてマセンケド?

気配も、命も。


「当然じゃ。
十年もそなたから逃げ回り、この一年ほどは人に紛れて生きておったのじゃ。」


「?!
うっそ…」


景時は目を見開いた。

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