赤い月 終
本物の阿呆
闇が、濃く、深く…
さらに、濃く、深く、深く…
膝立ちで腕も頭もダラリと下げた景時の躰中から、黒く凶々しい闇が一気に溢れ出た。
突風に銀の髪が煽られる。
視界を奪われる。
景時の姿が、黒いベールに隠される。
絡みつく黒曜の腕から身を乗り出し、うさぎは窓の外に広がる空を仰いだ。
人には見えはしない。
だが、確かに…
「月は在る。
なのに… これは…」
うさぎは声を震わせた。
月は在る。
在るのだ。
なのに何故、狂った赤い月が…
「黒曜… 何故じゃ?
何かの間違いであろう…?」
「俺にも」
わからん、と言おうとして…
黒曜は言葉を切り、うさぎを見下ろした。
華奢な身体を細かく震わせながら、自分に寄り添う彼女。
自分に抱かれる彼女…
「そうか…
アイツ、ヤキモチ妬いたンだ…」