赤い月 終
「は?
何を馬鹿な…」
「だってアイツ、バカじゃねーか。」
そうだ、アイツはバカだった。
イカレてるンだった。
確かに、景時の決意は本物だった。
あの夜も、そして今夜も。
全てを受け入れ、潔い覚悟を見せた。
だけど、愛しい女を見て。
他の男に抱かれる、愛しい女を見て。
「壮絶に妬いて、絶望して、本当に狂ったンだ。
月光の守護も役に立たないくらい、狂っちまったンだ。」
「そんな… そんな…
黒曜、何故そなたにそのような事が…」
「わかるンだよ。
自分でもイヤになるくらい。」
黒曜はそっとうさぎから身を離し、唇を歪めて苦く笑った。
「景時が考えそうなコトは、俺が考えそうなコトだ。
同じ思いで、同じ女を愛して…
…
まぁ俺は、アイツほどバカにはなれねぇケド。」
「…阿呆が。」
うさぎは暗黒の中心に目を向けて呟き、顔を伏せた。