赤い月 終
なんじゃこりゃぁぁぁ?!
肩に刺さっていた牙が抜けた。
片言が耳元で聞こえた。
聞き取りにくい。
だが、ハッキリわかる。
それは一度、聞いた言葉。
一度、彼が口にした言葉。
『泣いてもいいよ?』
目を見開いたうさぎは、手からバジュラを落とした。
震える唇で、彼の名を呼ぼうとした瞬間…
「?!」
再び闇が解き放たれた。
至近距離で煽りを食らって、よろめくうさぎ。
その細い腰が、強く、優しく、抱き止められた。
さっきまで暴れ狂い、彼女を傷つけていた腕で。
何が起こっているんだろう。
薄く目を開けてみても、暗い闇が広がるだけ。
だが、その流れを感じる。
また誰かが闇を呼んでいる。
いや、そんなレベルじゃない。
急激に… 吸収している?
誰が? 赤光が?
「俺が傍にいるから。」
黒い激流の中から、また声が聞こえた。
‥‥‥景時なのか?