赤い月 終
嵐が収まって、うさぎが恐る恐る目を開けた。
胡座をかいた誰かの膝の上に、抱き上げられているようだ。
うさぎは混乱し、またキュっと目を閉じる。
なんだ?
どーなってる?
今少しだけ見えた腕は、普通だった。
その上、この抱擁にもこの香りにも、馴染みがある。
だが、彼は…
彼は…
じゃあ、いったい誰に抱かれているのだろう。
見るのが怖い…
髪が優しく撫でられる。
吐息が耳を擽る。
「いっぱい泣いていいから。
ね? うさぎ。」
紅玉、姫、うさちゃん、うさぎサマ、うさぎちゃん、姐御、鬼神サン…
色んなふうに呼ばれている。
だが『うさぎ』と呼ぶ、この甘い声は…
「泣いておる場合ではないわ!」
うさぎは勢いよく顔を上げた。
すると頭が…
「ゥガっ?!」
どうやら顎にヒットしたようだ。