赤い月 終
声も震えている。
唇も震えている。
景時は目を見張って絶句した。
「心配ばかり… かけおって…」
一粒、また一粒…
うさぎの頬を、大粒の涙が伝った。
潤んで輝きを放つルビー。
真珠のような雫。
なんて美しいんだろう‥‥‥
(って、そーじゃねーだろ!)
俺、オトーサンに『泣かせたら殺す』って言われてンのに、さっそくコレか。
不甲斐ねェにも、ほどがあンだろ!
「ごごごめんね?
俺が悪かった。
ね? 泣かないで?
それとも、傷が痛む?」
「ぅー…
泣けと言ったのは、そなたではないか!」
振り上げた拳と一緒に、うさぎは狼狽える景時の胸に身を投げ出した。
あ。
そーだった。
ずっと、泣かせてあげたいと思ってた。
乾いた瞳が潤えばいいと思ってた。
哀しみが流れればいいと思ってた。
腕の中から小さな嗚咽が聞こえる。
うさぎ。
俺はやっと、君が涙を流せる場所になれたンだね。