赤い月 終
うさぎはもう何も言わず、ただ静かに泣き続けた。
景時ももう何も言わず、ただうさぎを抱きしめた。
夜が明ける。
太陽が顔を出し、目覚め始めた世界を黄金とオレンジに染めていく。
本人はまだ知らないが、それは今の景時の瞳の色によく似ていた。
全てを委ね、安心しきって涙を流しながら、うさぎは気づく。
景時の言う通り、自分は泣きたかったのだ。
月夜を思い、人間の罪を思い、自らの犯した罪を思い、ただ泣きたかったのだ。
なぜわかったのだろう。
本当に不思議な男だ。
彼は弱い。
嫉妬で鬼と化すほど脆く、愚かで、弱い。
だが、驚くほど強い。
闇を捩じ伏せ、喰らい、己の未来を勝ち取るほどに。
不可能を可能とするほどに。
この涙が乾いたら、自分も少しは強くなれるだろうか。
忘れることはないだろう。
決して許すことも、許されることもないだろう。
それでも前を向けるだろうか。