赤い月 終
そなたは良い娘じゃ
秋時(アキトキ)が景時を見失ったという場所から、黒曜(コクヨウ)はうさぎに誘導されるがまま夜空を飛んだ。
黒曜には、景時の気配は掴めない。
鬼気を発してもいない個人を特定するのは、鬼神であっても難しい。
なのにうさぎは、迷うことなくある古い館を指した。
「アソコか?
本当に?」
「間違いない。」
その建物から視線を逸らさず強く頷いたうさぎを見下ろして、黒曜は渋い顔をした。
(なんでわかるンだ?)
確かにソコからは、人間の気配を感じる。
だがあれは、たぶん女。
景時じゃない。
彼女にだってわかるはずだ。
なのに…
なんでわかるンだ?
なんで自信満々なンだ?
なんか… ムカつく。
「黒曜、早く。」
「…
ハイハイ。」
軽く袖を引くうさぎに憮然と言葉を返した黒曜は一気に降下し、窓を破って館の一室に飛び込んだ。